君に贈る花

君と君を愛する人たちと、それから

ゆりかごにサヨナラを(上)解説

 

 

ゆりかごにサヨナラを(上)

 

 

頁1

 

事務所での打ち合わせが終わり、作業室にこもるメンバーや他の仕事があるメンバーなど別々の解散となった。あくびをしながら宿舎に帰る準備をしていると「ヒョンウォン」とキヒョナが〜

 

→まずこのお話は、ショヌさんに抱かれるたびに「この人の本来の幸せを奪ってしまうのかもしれない」「自分が女だったらちゃんと結婚して子供産めたのに」というキヒョンくんの思いから始まります。ショヌさんに男としての本来の幸せを掴んで欲しい、でも離れたくないキヒョンくんはショヌさんに子供の話を持ちかけるのです。ショヌさんは今のままで充分幸せでしたが「キヒョナは子供を産んで家庭の幸せを手に入れたいのか」とキヒョンくんの望みを叶えるためにヒョンウォンくんに頼む決心をします。つまり、この二人がお互いを大切に思うあまりに、この悲しい物語が始まってしまったのです。二人の心のどこかには「あなたが永遠に隣にいてくれれば充分幸せです」という想いがしっかりとあったのに…。そう考えるとこの二人も悲しい運命のような…。

 

 

 

頁2

 

「ち、違うんだヒョンウォナ…ただ、知っておきたかっただけで…っ。まさか見つかるなんて思わなかった…」

「…」

「ショヌヒョンにも言わずに一人で行ったから、俺が悪いんだっ」

 

→診断書が見つかってしまった場面。キヒョンくんはヒョンウォンくんに頼む前に密かに診断に行っていました。ショヌさんの髪の毛一本くらい簡単に入手できるので。自分たちがAで一致したことに安心しヒョンウォンくんに頼んだのです。ここでは周りの皆に代理出産を行う気持ちを知らせ、断りづらい状態を作ったと勘違いされたくない気持ちから必死に弁解しています。

 

「…二人の子供、俺が代わりに産んであげるよ」

三枚の紙にはAのアルファベットが並んでいる。

 

→どうするべきか悩んでいたヒョンウォンくんはとりあえず遺伝子の診断に行きました。ここで三人が一致していなければ元も子もないので。しかし二人の子供を産むという決意(この時はまだ勘違い)に純粋に喜ぶメンバーにヒョンウォンくんは改めて再確認します。二人のことを良く思っていないのはやっぱり自分だけだと。分かりやすく言うと自分が「悪」であると実感します。ここまでくるとヤケクソですよね…俺が産んでやるよ、といった投げやりな感じでしょうか(きっと彼は遺伝子が不一致だと良いな、と心のどこかで願っていたはず)

 

 

 

頁3

 

「キヒョンの部屋から泣き声?みたいのが聞こえたから耳澄ましてたら、ショヌヒョンが焦らないで考えよう…って言ってて。俺はキヒョナがいてくれれば幸せだけど、お前の意志も尊重したい的な声も聞こえた。俺はさーあのショヌヒョンがそんな甘い言葉を!ってことに興奮しちゃったんだけど、今考えると子供の話だったのかなー」

 

→大事なのは「的な」ということ。そう、この言葉は確かなものではないのです。しっかりと聞き取れなかったミニョクくんが「こんな感じだろうな」と補正をかけてしまったものです。「キヒョナがいてくれれば幸せだけど」とハッキリとショヌさんは言うことができていません。まぁこの言葉を聞いたらヒョンウォンくんは色々辛くなりますよね…ミニョク氏…お前…(頭を抱える)

 

そっと一つの部屋の扉に耳を寄せれば、初めて聞くキヒョンの涙に濡れた喘ぎ声が〜 

 

→ヒョンウォンくんのしんどそうな姿に「自分が欲を出したから…」と思い悩んでしまうキヒョンくんを察したショヌさんは部屋を訪ねます。二人は慎重派で恥ずかしがり屋なこともあり事に及ぶ時はメンバーのいない場所を選んでいたのですが、初めて宿舎内で体を重ねた場面にまさかヒョンウォンくんが…。二人は悪くないのですが、幸せに浸っている自分たちの壁を挟んだすぐそこで涙を流している人がいることに気づくことはありません。

 

 

 

頁4

 

皆にバレないように病院に向かって受けた診断によると栄養不調と貧血に低血圧と結果は散々。

 

→誰も気づかないところで、ずっと苦しみ続けていた結果ですね。そばで仲良くしている二人を見たらストレスが溜まることくらい本人も理解済み。

 

俺はきっと…もうあの頃には戻れないから。

ごめん、もう今までのような日々には戻れない。絶望させてしまうかもしれないし、泣かせてしまうかもしれない。

 

→これらは、もうすでにこの頃から一人違う道を歩く覚悟を決めている気持ちの現れです。

 

…それにしても王子オッパはこんな時間に何してたんだろ。あの廊下の向こうはいっつも黄色い看板があって…行っちゃいけないよ、って太ったナースさんに言われたもん。

 

→廊下の向こう、とはこの後出てくる隔離病棟です。この時にはもう遺伝子の薬を投与することを決めています。

 

 

 

頁5

 

また騒がしくなる部屋にケタケタ笑いながら、本当にこの時期で良かったと内心胸をなでおろす。

 

→あの薬を投与して苦しむ姿を見せたくない、という強い気持ちです。

 

 

 

頁6

 

「新しい薬の副作用が酷いので普通の病室では過ごすことができないんです。不要な物は怪我に繋がる可能性もありますので」

 

→副作用のあまりの痛みに理性を失い暴れることもあるため、落ち着くまではここで過ごします。ご飯もまともに食べられないために、体重も落ちてしまいました。

 

静かにヒートアップしていく言い合いに思わずショヌヒョンの服の裾を握ってしまったが、それに気づいてそっと指を絡めてくれた。視線を上げるとヒョンウォンは俺たちの絡め合った指を見たような気がしたけれど、またすぐに意志の強い目に戻る。

 

→見たような気が、じゃなくて、しっかりと見ています。手なんて握られたら二対一みたいでそりゃあ苦しいですよ…。無意識って怖いですね。

 

でも、三人の愛を引き継いだ子供が俺を他人として二人の子供として育てられていくことに、耐えられる気がしなかった。だったら本当に赤の他人になりたかった。

 

→好きな人が違う人と子供を育てていく姿を近くで見ることさえも辛いのに、その子供が少しでも自分の子でもある事実が残っていたら。やるせない気持ちともどかしい歯がゆい気持ちで複雑ですよね。いやー感情がぐちゃぐちゃですわ、これは…。

 

 

 

頁7

 

いっその事言ってしまった方が楽なのは知っているが、この先のことを考えると一人で耐えた方が良いとの結論に至った。

 

→この先とは、一人皆から離れる未来です。この時点でヒョンウォンくんは産んだ後一緒に暮らさないことを決意しています。辛い姿を見せてまた過保護に拍車がかかったり罪悪感を負わせると「お前の面倒は俺が一生見る!」とか言いそうなキヒョンくんなので。

 

「…シウ」誰もいない病室で呼ぶ名前は、このお腹にいる赤ん坊に向けて。

 

→ヒョンウォンペンなら全員大好きあの企画からお名前を勝手に拝借致しました。本当にありがとうございます。しかしこの話の中では、ヒョンウォンくんがあのシウくんから名前をとったわけではありません。ただ自分のつけたい名前がシウだった、という程でございます。

 

 

 

頁8

 

(ウォノ)

言い返してきたトーンは淡々としていて、何だか今日は生気が感じられない。

「ショヌが嘆いてたぞ~お前が全然決めてくれないって」

 

→この頁はメンバーそれぞれの視点で進みます。ヒョンウォンくんの様子がおかしいのはショヌさんが子供のベビー服の話をしていったから。目の前で好きな人に嬉々としてそういうことを話されると、嫌でも失恋を実感させられますし。ショヌさんは純粋に家族同然のヒョンウォンくんの意見を大事にしたいだけなんです…無意識に傷つけてばかり…。

 

「新しい曲。お前が無事に戻って来たら七人で最初に歌う曲」

 

→ウォノさんはヒョンウォンくんが戻ってきたらすぐにカムバしてモンべべに最高の姿を見せてあげたいと思っていて、その為にせっせと新曲をこしらえていました。ヒョンウォンくんはこのデモをすりきれるくらい聞き、グループを離れようとしていた彼を引き止めたのはこの曲の存在が大きいです。ちゃんとカムバして歌いますよ!(ストーリーには入らないけれど)

 

 

(ジュホン)

気になったけれど、しっかりとガムテープで封をされたダンボールをこじ開けるのは気が引けた。たった七つだけに纏められたヒョンの荷物。

 

→最初は出て行ったヒョンウォンくんがメンバー六人と赤ちゃんのために一つずつダンボールを残していて、中には手紙が…みたいな伏線を考えていたのですがなくなりました。なのでジュホンくんのターンに伏線はないですが、強いて言うならこの時点で荷物は全て片付けていて、ここに残るつもりはゼロだということが伺えます。ジュホンくんがダンボールを開けてれば勘付いていたかもしれない。

 

 

(ミニョク)

実はもう一つ大切な準備が同時進行で行われていた。今日はジュホニが家で一人、頑張ってヒョンウォナの荷物移動をしてくれているはずだ。

 

→ジュホンくんと同時刻で進む話。友達と遊ぶと言って家を出ましたが、友達とはヒョンウォンくん。大切な準備とは二人の結婚式。ここで渡されたのはビデオカメラです。

 

しかし、触れたことによって微妙に体が震えていることに気づいた。

 

→好きな人の結婚におめでとうを言わなければいけない辛さ…気分も悪くなりますね。その後会話で出てくるように「精神的な乱れ」とはこの結婚式の話題が実は大きく影響しています。 ヒョンウォンくんの恋心を知ったとき、ミニョクくんは友達と言いながら何もわかってなかった自分を呪います。設定では大人になってアイドルを引退してからも、ヒョンウォンくんの家にゲームをしに行くミニョクくんです。

 

 

チャンギュン)

「ヒョンウォニヒョンがいなかったら子供は考えなかったんですか?」

 

→この話の中でマンネが一番冷静で賢い人物です。二人が交際を始めてからも冷かさずそっと見守ってきた彼は、こういう疑問も当人たちの問題だと深く入り込む真似はしません。実は書き始めた頃、子供を産み離れて暮らし始めたヒョンウォンくんをチャンギュンが支えていくシナリオでした。数年後今度はチャンギュンとの子供を産んでハッピーエンドみたいな流れだったのですが、途中から子供×ヒョンウォンの未来の方が見たいな…と思い始めたのでボツに。

 

「…俺は、勿論自分の子供が生まれてくることの嬉しさもあるけれど、それ以上に、ヒョンウォナが俺たちのために産んでくれることの嬉しさも強いんだ」

「生まれてくる子供と同じくらい、ヒョンウォンのこと大切に幸せにしたいと思ってる」

 

→これがキヒョンくんの純粋な気持ち。子供を産んでくれるから、とかの罪悪感や情けからきているものではなく純粋にヒョンウォンくんに感謝しているのです。でもそれが彼を苦しめているのですが…。ショヌさんもキヒョンくんもマジの良い人だから憎みづらいです。

 

 

(ショヌ)

朝日に照らされ入院期間でさらに白さを増した薄い肩は、男性のものではないような儚さを醸していた。今までにだって何回も見ていたはずなのに。

 

→ヒョンウォンペンのモンペであり推しが愛されてないと無理な自分が顔を出した瞬間。ショヌさんちょっとドキッとしちゃってますね〜。まぁあなたたちに深く傷つけられたせいで(言い方)儚さが増したヒョンウォンくんは綺麗ですから…。このまま惹かれ…とはならなかった。

 

ジッと見つめる顔は少し曇っていて、何かいけないことをしてしまったか不安になる。しかし首を横に振ると「可愛いですね」とベットに背を預けた。

 

→以前偶然看護師さんから聞いたチューリップの花言葉を思い出します。ショヌさんが意図的ではないことをわかっているからこそ、そういう運命なんだな、という悟り。

 

「お前は可愛いというより綺麗だから、チューリップよりも似合うものがあった気がする」ヒョンウォナは一瞬目を見開いて俺を見つめたまま瞬きを繰り返すと、ゆっくりと手元に視線を落としていく。

 

→綺麗って本当に容姿の褒め言葉って感じだけど、可愛いって中身も全て含めての愛しさを感じているイメージありませんか?ヒョンウォンくんはそういう解釈。嬉しいけど切ないよね、キヒョンくんは可愛いけど俺は…っていう。

 

「赤色のチューリップって可愛いですね」

 

→せめてもの強がりと少しだけ自分の気持ちに気づいて欲しかった心の現れ。赤のチューリップの花言葉:愛の告白 黄色のチューリップの花言葉:望みのない恋

 

 

(キヒョン)

「キヒョナはチューリップ飾ったの?」と突然質問されて驚いたが、昨日ショヌヒョンはここに来ていたし知っていて当然かと納得したのちに「うん。…こういうこと初めてだから嬉しくてちょっと泣いちゃった」と他のメンバーには言えないことも話してしまった。ヒョンウォナは茶化すわけでもなく優しい笑顔でずっと聞いてくれた。

 

→不器用で花なんて到底自分から選んだことのないショヌヒョンからのプレゼントに感激するキヒョンくん。惚気なんて一度も零したことのないキヒョンくんが思わず話してしまったのは、あまりにもヒョンウォンくんが優しい顔をしていたから。しかし彼は出産を間近に控え、もはや「もうすぐ二人と離れられるし今までみたいに苦しい思いをしなくて済む」という心境にまで至っていたのでそんな表情を作れたのです。

 

「…嫌いになった?」

細められた綺麗な瞳が俺を見つめている。

「…そんなことで嫌いにはならないよ」

「そりゃそうだ」

 

→「そんなことで」って言い方にヒョンウォンくんはこの二人は一生一緒にいるんだろうなぁと実感します。何年も一緒にいたんだから、そんなこと、なんですよね全部。そんなんで崩れる関係じゃないし、そこに自分が入り込む隙間がないことに実感して、苦しくなって、でもなんだか安心するのです。望みがないなら諦めやすいから。

 

「幸せになってね」

どこか違和感さえも感じるような言い方だった。他人事のような距離を感じるようなまるで突き放すかのような。

 

→これ、裏を返せば「俺は幸せになれないけど」って意味です。ショヌさんが手に入らない以上、ヒョンウォンくんに幸せは訪れないわけですから。キヒョンくんの幸せ=ヒョンウォンくんの不幸(わかりやすく言うと)

 

 

(   の場合)

「さっきね、台に乗って運ばれて行ったんだ。お腹おさえてたけど、変なもの食べちゃったのかな?」

 

→この空欄三つ分空いているのですが、まぁわかりますよね。あの看護師さんです。ヒョンウォンくんの状態が悪くなって運ばれていくのを見た子供の声。この看護師さんのおかげで(上)のオチが上手くついた…感謝です。

 

 

 

(下)に続きます。

 

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