君に贈る花

君と君を愛する人たちと、それから

ゆりかごにサヨナラを(下)解説

 

 

ゆりかごにサヨナラを(下)

 

 

頁1

 

誰もいない病室で今だけは母親になれているはずなのに、傍らに佇む黄色のチューリップがまるで見張るように存在している気がして、気づいたら床には無惨な姿のチューリップと赤い血が混じり合っていた。

 

→ふらついて手が当たってしまったわけではなく、衝動的に花瓶を割ってしまったのです。望みのない恋を意味する花が傍に存在するのは確かに耐えられないでしょう…。

 

 

 

頁2

 

「…俺みたいにならないでね」

この魔法が成功したら、俺のようではなくキヒョナのような人になって、本当に愛する人と自分のために魔法を使うんだ。そして、本当の幸せを手に入れるんだ。

 

→この言葉からヒョンウォンくんが永遠に自分の幸せを諦めていることがわかります。

 

「シウ…君のママになりたかった」

 

→ヒョンウォンくんはお腹の中にいるときだけはシウと名付け自分の子供のように育てようと密かに決めていた故に、お腹の中から出てきたこの時には一度も自分をママだと名乗ってないのです。「なりたかった」という言い方をあえてしている…( ;  ; )

 

俺のことは忘れて。いや、忘れないで。どこかで覚えていて、思い出して。君を産んだゆりかごのことを。

 

→覚えていないだろうけれど、どこかの片隅で自分の存在を知っていてほしい葛藤。ここからはこの子のママはキヒョンくんなので、自分のことは赤ちゃんが眠る場所であるゆりかごとしています。ヒョンウォンくんはこの赤ちゃんがずっと眠っていた場所なので…タイトルはここから来ています。

 

 

 

頁3

 

赤いチューリップの花は三人で暮らす部屋の真ん中に飾った。枯れた時が悲しいな、とこぼしたら「そしたら何回でも買ってくるよ」と照れた表情で言ってくれたショヌヒョンと新しい家族と、これからはもっと幸せになれると思っていた。

 

→ちなみに二人ともチューリップの花言葉をまだ知りません。ヒョンウォンくんも言うつもりはありません。

 

 

 

頁4

 

「お前の未来を奪ってまで、子供が欲しかったわけじゃない!」

 

→総意ですね。(上)でも書いた通りキヒョンくんとショヌさんの(ある意味)思いのすれ違いから始まった代理出産。二人が本当に大切に思っていたのは、Monsta Xとして七人が一緒にいて、さらにその中で自分を愛してくれる人がいる世界であって、実際は子供よりもヒョンウォンくんの方が大切だったのかもしれません。

 

初めてだった。ショヌヒョンがキヒョンより俺を優先してくれたのは。それなのに、行ってくださいと、自分から離れようとするなんて。

 

→これもすごい切ない。今までショヌさんは当たり前ですが恋人であるキヒョンくんを優先し続けていました(これまでのストーリーでもそのような場面がある)キヒョンくんを追いかけるよりもヒョンウォンくんを独りにできないと、初めて自分を優先して自分を見てくれた瞬間なのに、もう嬉しいとも思えない状態です。逆にこれ以上好きにさせないでくれ、という心情。

 

 

頁5

 

「あれ、ヒョンウォナの編集してないの?」

「こいつ昨日渡してきたから編集できなかったんだよ~だから仕方なしにノーカットでお届けします」

 

『…最後に捨てようと思って、全部』

 

→ここからのビデオメッセージ。看護師さんはヒョンウォンくんにまだ録画しないでくれ、と言われスイッチを切ろうかと思いましたが、「捨てようと思って」という言葉に勘付いてそのままビデオを回しました。看護師さんだけは薄々気づいていたのですねぇ、ヒョンウォンくんが何かを抱えていたことを。チューリップを血に染めたのもわざとだと気づいています。この方、ある意味めちゃくちゃキーパーソン…ありがとうございます。

 

『好きになって、嫌いになれなくて、ごめんなさい…』

 

→諦めきれなくて、じゃなくて、嫌いになれなくて、と言ったのは自然に消えていくほどヤワな思いじゃないと理解しているからです。それに、自分がショヌさんのことを好きにならなければ二人が罪悪感を抱えることもなく生きていけたのに…というどこまでも優しいというより愛の強い人ですね。愛する人にはとにかく幸せに生きて欲しい思いが強いヒョンウォンくんです。

 

『キヒョナ、結婚おめでとう。……あの子の母親は、この世界でお前だけだ』

 

→「あの子の母親は君だ」と改めてしっかり告げたのは、キヒョンくんの心のどこかで産んでもいない自分が本当に母親と名乗っていいのかという戸惑いを消してあげたかったから。ヒョンウォンくんはキヒョンくんのこともしっかり見ていたのです。

 

 

 

頁6

 

「ショヌヒョンが選んだのがキヒョナだったから」

 

→メンバーそれぞれに対して接し方はもちろん違うわけで、その中でキヒョンくんに対するショヌさんはずっと優しくてあったかくて、それがヒョンウォンくんの好きなショヌさんの姿でした。つまりショヌさんとキヒョンくんが永遠に変わらず共に生きていくのならば、ヒョンウォンくんもきっと永遠にそのショヌさんが好きなのです。

 

あの病室で、どのベビー服がいいか大量のカタログを渡し「産まれるまでに決めておいてくれ」と言ったことを思い出す。なんでもいい、と言い続けていたのにいつの間に…。ヒョンウォナがたった一人ベビー用品店で俺とキヒョナの子供のために、服を選ぶ姿を想像する。一体どんな思いでこれを選んだのだろう。

 

→ここでも伏線回収です。あんなになんでもいいと言っていたのに、律儀に買ってくるヒョンウォンくん( ;  ; )本当は自分の子供に買ってあげたかったことでしょう。そんな思いを皆はもう汲み取ることができるので、二人は一生このベビー服を捨てずにとっておきます。

  

 

頁7

 

「あなたの思いは捨てるものじゃない。誰にも知られずに死んでいっていいものじゃない。あなたが彼にかけた想いも、あの子に注いだ想いも全て立派な愛情よ」

 

→これはあのビデオレターの際に捨てようとしたヒョンウォンくんが「悪」だと思い込んでいた自分の恋心を、大切な感情だと正してくれた言葉です。

 

 

 

頁8

 

一人の少年が少しばかり急な勾配を必死に駆け上がる。背中にはボロボロのランドセルがひっついていて、その肩側に緑色の亀のマスコットが走る度にブラブラと揺れている。坂の先にはこじんまりとしたコテージのような家が待っている。〜

 

→これは約10年後のお話です。大きくなった二人の子供ガンウくんは、両親があまりにヒョンウォンくんを気遣うことの影響もあってかヒョンウォンくんにとても懐きます。放課後は毎日のように都心から少し離れたヒョンウォンくんの家に遊びに行きます。

 

「…ランドセル、変えたら?ボロボロじゃん」

「やだよ!ヒョンウォニヒョンがくれたものだもん!」

 

「もしかして…あのサッカーボールも…」

「穴空いて空気なくなったから部屋に飾ってる!」

「…ガラクタじゃん」

「だって最初にヒョンがくれた物だもん」

 

→ 頁7でヒョンウォンくんがあげたいなぁと思っていたもの、両方ともしっかりとプレゼントすることができたみたいですね。しかし最初にあげたプレゼントはあのベビー服だということをガンウくんは知りませんし、ヒョンウォンくんも言うつもりはありません。(ガンウくんは自分のアルバムを見て、このベビー服俺好きだったのかなぁ、程度の認識)

 

ヒョンウォンが一つだけ選んだものは、形の歪な唯一の赤色で折られたチューリップだった。

 

→ 伏線回収〜!これケッコーわたし的にはグッときます。本物でもないし、なんなら失敗作だし、それでもヒョンウォンくんにとっては唯一の真実の愛を、10年越しにようやく手に入れることができたのですから。

 

そんな二人を見守るように、シウと名付けられた一匹の猫は、白いゆりかごの中で静かに眠っている。

 

→ これ途中で「え、ヒョンウォン子供産めたの…?!」となった方もいらっしゃったりします?(それが狙いだったりする)そんな奇跡は起きないのですが…シウと名付けられた猫はとてもよくヒョンウォンくんに懐きます。最後にもう一度、ゆりかごが出てきますね。ヒョンウォンくんとガンウくんとそれからゆりかごの中で眠るシウと、10年かかってしまいましたが、この三人が共に存在する空間はとても幸せで溢れているはずです。

 

 

 

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